「食養⑥なぜ梅干」

2013年06月22日

「食養⑥なぜ梅干」

「梅」は梅干にするだけでなく、ほかにも利用法があります。梅酒は作られる方が多いと思いますし、梅シロップも同様でしょう。これは予想以上に簡単で、材料は梅と飲用アルコール類(焼酎とかブランデー)、シロップは梅(いずれも完熟前の青梅)と砂糖。梅干を作る時のような重石をかけたり干したりする作業は要りません。塩の代わりにアルコール、砂糖の浸透圧を使って梅の成分を滲出させるだけです。

あと、「梅肉エキス」というのがあります。完熟前の青梅を叩いて割り、種を除いたあと下ろし器で摺って布巾で絞り、その梅汁を煮詰めて作りますが、先人が生み出した貴重な伝承薬です(食中り、下痢など)。作り方を細かい点まで伊豆ふるさと村の秋山先生から教わっていますが、私はまだ自分で作ったことはありません。そのうちに…と思っています。

梅干の話に戻ります。私なりの梅漬けの作り方は前々回と前回(講座④、⑤)に記しました。残る土用干しは7月末から8月上旬の3日ほど天気が続く時にやりますので当分、間があります。それで、なぜ「梅干を自分で作りましょう」と勧めるか?そのわけを理解してもらうには梅干と梅酢の効能にふれないわけにはいきません。カルシウムを吸収する助っ人である、疲れや肩こり・腰痛・筋肉痛の解消する、食中り・下痢、健胃、整腸剤に…と挙げられますが、学術的にとなるととても一口で説明することはできません。とりあえず今回はさわりだけです。

梅干は酸っぱいですよね。あれはクエン酸の味です。レモンはじめ酸味を帯びた柑橘類の果物も同じですが、そのクエン酸をたくさん含んでいるのが梅干(梅酢)です。人間が生きていく原動力は栄養素、つまりタンパク質・炭水化物(現在は糖質と言うのが主流)・脂肪ですが、それぞれの消化酵素などは中学とか高校の授業でも習ったところですよね。

組織(筋肉や臓器、爪とか髪の毛も)を構成する大部分はタンパク質ですが、体を動かす主エネルギーは糖質です。エネルギーに変換される過程でブドウ糖、α-グリセロリン酸、焦性ブドウ酸(ピルビン酸)などに転換されますが、焦性ブドウ酸が過剰になると乳酸になります。これは疲れの素(もと)としてご存知の方も多いと思いますが、筋肉内に溜まると筋肉を硬化させます。筋肉痛の元凶と言われています。そうさせないのがクエン酸で、乳酸を水と炭酸ガスに分解して体外に排出する。

そのクエン酸を多量に含んだ食品が梅干なのです。今主流の医学(西洋)では「たかが梅干」扱いですが、これは病院で患者さん梅干を売るわけにはいかないからでしょう。お医者さんは皆さん、効用を知っているんです。何故って、必ず生化学で「クエン酸回路」は勉強しますから。大学以降の専門分野ですから「TCA回路」あるいは「TCAサイクル(tricarboxylic acid cycle)」としてですが、呼称が違うだけで同じです。クエン酸のほかコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、リンゴ酸などいくつかの有機酸が連携しての人体に関与する重要なサイクル(回路)で、最初は「クレブス回路」と言われていました。ドイツ生まれの生化学者・医師のハンス・アドルフ・クレブスが1932年の尿素回路に続いて1937年にこのクエン酸回路を発見(発表?)したからです。イギリスのケンブリッジ大学に移ったあとの研究のようです。これによって1953年にノーベル生理学・医学賞を授賞されています。

深みにはまりそうなので止めますが、それで梅干を食べましょうということなのですが、ただし、“本物を”でなければいけません。で、しょうがないので梅干を自分で作りましょうということになるわけです。その年に1回のチャンスが今なのです。今月初めに伊豆のふるさと村から届いた食養学会の機関紙「楽我記」から、秋山先生の1文を下に引用します。

――年々自家製の梅干し作りをお勧めしておりますのは、ひとえに安物の出所不明のいかがわしい梅干しを避けていただくためにです。すでに周知のことですが、中国の漬け梅を輸入して塩抜き後、塩加減、着色、調味料添加などの再加工を施した産品には原産国の表示は要らないという農水産省、厚労省主導の詐欺擬いの商法が堂々とまかりとうっているからです。

梅干しが何処で取れたものでも構いませんが、ただ不可欠である塩抜きの工程で健康食品であるべき梅干しの機能がゼロとなり、ましてや蜂蜜などといって甘味料を添加した代物などは梅干しを原料にした菓子というべきもので、私には許せない仕組みです。季節は移ろいます。逃せば「年先送りになります。来月の中旬ぐらいまでに腹を決めてご連絡をください。正しい浸け方と一級品の梅をお届けするお約束をしましょう。一日一個の自家製梅干しは健康の守り本尊です――

5月28日付の号ですから日が経ちますが、まだ生梅はお近くでも手にはいります。

伊豆・ふるさと村

榎本正男プロフィール

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